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クラウドやコンテナなど、ひと昔前までは存在しなかったITシステムに関する新たな技術が普及してきました。
それに伴い、システム監視のあり方も大きく変化しています。

「オブザーバビリティ」はこの頃、大きく注目されているシステム監視の手法のことです。
この記事では、いまいち理解しにくいオブザーバビリティの概要から、メリットやデメリットまでをご紹介します。

本記事を参考に、自社で取り入れるべきかを検討いただけますと幸いです。

オブザーバビリティとは

オブザーバビリティとは、複雑に絡み合ったシステム・アプリケーションの全体像を把握する取り組み、あるいはそれが可能な状態のことを指します。
日本語に訳した、「可観測性」という表記もよく使われています。

元々は、ITとは別の工学部門における専門用語でしたが、最近はITの分野でも使われるようになりました。

ここ数年、クラウドやコンテナといった新しいIT技術が急速に普及し、ITシステムはますます複雑になってきています。
ITシステムの安定運用に必要なのがシステム監視ですが、今までと同じやり方の監視では、こうした複雑なシステムに対応しきれない部分が出てきました。

そこで最新鋭のシステムの安定性を保つため、新たに台頭してきた監視手法がオブザーバビリティというわけです。

ITシステムの変化について

従来の監視とオブザーバビリティの違いを見る前に、まずITシステムの変化を確認しましょう。
主に変わったのは、監視対象とシステムの構成です。

監視対象の変化

ひと昔前までのITシステムといえば、オンプレミス環境に配置された物理マシンに実装するものでした。
自前で物理サーバーを用意し、それぞれにWebサーバーやアプリケーションサーバー、データベースサーバーをインストールすることで、システムを開発します。

それに対し、現在はパブリッククラウド環境の仮想マシンやコンテナを利用することが一般的となりました。
これにより、システムの負荷に応じて、自動でマシンの数を増減させることが可能になりました。

また、システムの配置場所についても社内ネットワークだけでなく、社外のクラウド環境にまで広がりました。

システム構成の変化

アプリケーションの構成も変化しています。

従来、Web・アプリケーション・データベースによるシンプルな3階層のWebアプリケーションが一般的に使われていました。
この構成はモノリシック・アーキテクチャーとも呼ばれます。

それに対し、最近はマイクロサービス・アーキテクチャーと呼ばれる構成が広まってきました。
マイクロサービス・アーキテクチャーは、複数の小さなサービスをAPIで連携させる形をとります。
これによって、システムのリリース後でも全体を停止せずに開発ができるため、小さな改善を繰り返していくアジャイル開発手法に適していると言われています。

また各サービスは独立しているため、とあるサービスの負荷が高い場合の負荷分散においも、該当サービス部分のみ増強すればいいというメリットもあります。

モノリシック構成とマイクロサービス構成

従来の監視とオブザーバビリティの違い

以上の点を踏まえて、監視手法の変化も見ていきましょう。

従来の監視の概要

従来は、各装置にインストールしたエージェントや、SNMP(Simple Network Management Protocol)などを利用した監視が一般的でした。
各物理マシンのデータを定期的に収集し、装置がダウンしたり、装置の負荷が事前に設定したしきい値を超えた場合は管理者に通知する、という流れで行います。

シンプルな構成のシステムであれば、こうした監視で十分対応できましたが、複雑なシステムに対しては不足している部分があります。
その主な例が、動的に増減する装置の監視に不向きなことです。

たとえば、Kubernetesのようなコンテナ管理ツールを利用すると、システム負荷に応じてコンテナの数を自動で増減させることができます。
負荷の変動に対して、逐一対応する必要がなくなるという非常に便利な機能ですが、SNMPなどはこのような機能を想定して設計されているわけではありません。

また、監視する範囲もネックになりつつあります。

これまで、監視ツールは監視する対象と同じ場所に配置するのが当たり前でした。
社内のシステムを監視する場合は社内LANに置く、という具合です。

ところが現在ではシステムの範囲が広がり、社内のみならず、パブリッククラウド上に配置されたものまで監視する必要が出てきました。
これらをひとつのツールでまとめて監視するためには、監視用の子サーバー(プローブサーバー)を準備したり、VPNを利用してデータの疎通を図るなどの工夫が必要で、不便が生じます。

従来の監視の仕組み

このように、新しいサービスを従来のツールで監視することの限界が見えてきました。
そこで登場したのが新たな監視「オブザーバビリティ」です。

オブザーバビリティの概要

上記のような新しいシステムの監視を容易にするため、オブザーバビリティに対応した監視ツールはコンテナ監視などのほか、3つの機能を備えています。
「メトリクス」、「ログ」、「トレース」の3種類のデータを取得することです。

メトリクスは定期的に集めた監視データのことで、CPU使用率、メモリー使用率などのほか、リクエストに対する応答時間なども含みます。
従来のSNMPなどにより監視でも用いられてきた、基本ともいえるデータです。

ログはアプリケーションの動作や通信を記録したテキストデータのことです。
システム内でいつ、どのような動きがあったかを詳細に把握することができます。

トレースとは、システム内で発生した処理を順番にたどることです。
システムに問題が発生したときなどに、処理の順番や経過を見える化することで早期に原因を把握できます。
トレースによって、複数のマイクロサービス間で頻繁に連携しあうような複雑なシステムでも、処理の流れを的確に把握できるようになりました。
また、もしどこかのサービスでエラー処理が出てしまった場合でも、原因やボトルネックを迅速に特定することができます。

以上、3種類のデータを併せて見ることで、複雑なシステムの監視に対応できるようにしたのがオブザーバビリティです。

オブザーバビリティの仕組み

オブザーバビリティのメリット3選

ここまで、オブザーバビリティの概要や注目される背景を見てきました。
改めて、メリットを確認しておきましょう。
ここでは3点のメリットをご紹介します。

コンテナや仮想マシンなどの監視に長けている

コンテナや仮想マシンを利用する場合、物理マシンの台数にしばられることなく、負荷や拡張に応じて柔軟にマシン数を変えることができます。
また、物理的な場所に制約を受けることもありません。
社内LANやパブリッククラウドに配置可能なのはもちろん、障害時には自動で別のデータセンターにデータを送信することも可能です。

オブザーバビリティを備えた監視ツールは、こういった物理的な制約がない対象に対しても、横断的な監視を実現します。

マイクロサービスの一元管理に長けている

従来の監視手法では、各マシン・サーバーをひとつひとつ監視します。
この方法だと障害が起きた場合、数多くの装置の状態を確認しなければならず、復旧までに長い時間を要します。

それに対しオブザーバビリティはシステム全体を網羅的に把握できるように設計されているため、短時間で障害の原因を特定できます。

マイクロサービスの一元管理にはオブザーバビリティが適していると言えるでしょう。

多様なデータによる分析で、問題の根本を把握できる

従来の監視では、CPU使用率などのメトリクスの監視により、負荷が過大になったり、マシンがダウンしている部分を把握できます。
ただし、「なぜ負荷が増えてしまったのか」という原因を教えててくれるわけではありません。
原因を追求するには、他の方法でさらなる分析が必要となります。

オブザーバビリティはそういった原因の特定に必要なデータもまとめて提供することができます。
トレースで各サーバー間のやりとりを確認したり、ログでによる詳細な動作を把握したりすることによって、複数の側面から障害を可視化し、障害の根本原因を見つけることができるようになります。

特に最新の複雑なシステムの場合、障害原因の把握には時間がかかりがちなため、オブザーバビリティの導入が有効と言えるでしょう。

オブザーバビリティの注意点3選

オブザーバビリティには多くの利点がある一方、注意すべき点も存在します。
場合によっては、導入しない方が良い企業もあるでしょう。

導入後に後悔しないよう、注意しておくべきポイントを3点ご紹介します。

従来のシステムの監視には過剰な機能

オブザーバビリティは複雑なシステムに対応するために設計されています。
逆に言えば、従来のシンプルな3層構造のシステムにはやや過剰な機能もあるでしょう。

多くの企業では、コンテナやオーケストレーションツールといった最新の技術を利用していない環境も持っているでしょう。
その場合はコンテナ監視機能などは不要な機能となってしまいます。
従来のシステムの監視をする場合には、多様な機能を使いこなせない可能性がある、という点は注意しておきましょう。

SaaSが前提のため、オンプレミス環境に置けない可能性

オブザーバビリティでは社内外の装置の監視をするため、リモートで複数の環境と通信できるSaaSツールとして提供されることが一般的です。

そのため、選ぶツールによっては社内LANなどオンプレミス環境に配置できない場合があります。
セキュリティ上の理由などから、インターネットと通信できないシステムを監視したい場合、SaaSとして提供される監視ツールは適しません。

自社のシステムがSaaSで監視できるのかどうか、予めチェックしておきましょう。

価格が高い

オブザーバビリティを実現する代表的なツールとして、DatadogやNew Relicなどが挙げられます。
これらのツールは、他の監視ツールと比較してライセンス価格が高くなりがちです。

一例として、Datadogと当社のサーバー監視ツール「Applications Manager」および「Site24x7」の価格を比較した結果は、以下の図のようになっています。
オブザーバビリティに必要と思われるインフラ監視(メトリクス、30台分)・ ログ収集(監視、10GB/月)・APM(トレース、Java10台分)機能を1年間利用すると、当社製品の方が57万~76万円ほど安くなります。

類似製品との価格比較表

DatadogやNew RelicはSaaSとして提供されていますので、監視用のサーバーを用意する必要がありません。
ただ、それを踏まえてもかなりのコストがかかるという点も抑えておきましょう。

※1:Applications Managerにはログ収集機能がないため、ログファイル監視機能を代替としています。
※2:オプションでアプリケーションログ機能で10GBのログ監視を追加しています。
※3:オプションでアドバンス監視を10を追加しています。
※DatadogとApplications Manager・Site24x7のそれぞれの公式Webページ上で公開されている標準価格を元に算出しています。実際の見積もり・購入時の価格とは異なる場合があります。各製品のより詳細な価格については以下のページをご参照ください。
Datadogの価格詳細
Applications Managerの価格詳細
Site24x7の価格詳細
※Datadogのライセンス価格はドル表記のみのため、2022年3月30日時点のレート$1=121.7円(小数点以下四捨五入)を基に日本円での価格を算出しています。
※この表の基となった、各製品のライセンスの内訳は下記のとおりです。
Datadog:インフラストラクチャー Pro(30ホスト)、ログ取り込み(10GB)、APM(10ホスト)
Applications Manager:50モニター年間ライセンス、Java Web トランザクション解析年間ライセンス
Site24x7:PROプラン、ログ監視オプション(10GB追加)、アドバンス監視オプション(10監視追加)

オブザーバビリティが実現できるツール

当社では、オンプレミス型のサーバー監視ツール「Applications Manager」、およびオブザーバビリティに必須のメトリクス、ログ、トレースの機能を備えたSaaS型監視ツール「Site24x7(サイトトゥエンティ―フォーセブン)」を提供しています。

どちらも低価格でありながら、より安定したシステム運用を実現する多様な機能を備えています。

SaaS型監視ツール Site24x7

多様な機能を備えながら、月当たり2,000円~という低価格で導入することが可能です。
世界のカスタマー累計で、30,000カスタマーを突破しました。

30日間、無料で全機能を試せる試用期間もありますので、ぜひお気軽に試してみてください。

無料で試用できるフリープランの登録や、価格の詳細については以下をご覧ください。

フリープランのサインアップはこちら:
https://www.site24x7.jp/signup.html?pack=1&l=ja

プランと価格の詳細はこちら:
https://www.site24x7.jp/pricing.html

アプリケーション性能管理ツール Applications Manager

オンプレミス型でありながら、物理サーバーはもちろん、仮想・クラウド・コンテナなどの監視も可能で、年間30.6万円~から利用できます。
また「APMインサイト」というオプション機能を付けることにより、Webアプリケーションの動作をコード・SQLクエリのレベルまで可視化し、ボトルネック特定を容易にします。

ログ収集機能はないためオブザーバビリティの要件には不足していますが、従来のシステムの管理、障害把握を容易にしたいという企業に特にオススメのツールです。

Applications Managerの資料

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